甲状腺がん

    甲状腺がんとは

  1. 甲状腺の病気は、男性よりも女性に多く見られ、これらは腫瘍ができるもの(腫瘍症)とそうでないもの(非腫瘍症:甲状腺腫、バセドウ病、慢性甲状腺炎[橋本病]など)に分けられる。さらに甲状腺の腫瘍のうち大部分は「良性」で、がんではない。しかしながら、中には大きくなったり、ほかの臓器に広がる「悪性」の性質を示す腫瘍があり、これを甲状腺がんという。甲状腺がんでは、通常、しこり(結節)以外の症状はほとんどないが、違和感、痛み、飲み込みにくさ、声のかすれ(嗄声)などの症状が出てくることがある。このため、甲状腺の病気が甲状腺がんかどうかは、診察や検査をもとに詳しく調べていくことになる。

    甲状腺がんは、1年間に人口10万人あたり7人前後の割合で発症するとされている(地域がん登録全国推計値)。組織の特徴(組織型)により、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんに大きく分類されている。また、甲状腺から発生するリンパ系のがんとして悪性リンパ腫を加えて分類される場合もある。これらは悪性度(広がりやすさ、ふえやすさ)、転移の起こりやすさなどにそれぞれ異なった特徴があり、治療費も大きく異なる。
    1. 乳頭がん
    2. 乳頭がんは甲状腺がんの中で最も多く、甲状腺がんの約9割がこの種類に分類される。40歳から50歳代の比較的若い女性に多く、極めてゆっくり進行する。リンパ節への転移(リンパ行性転移)が多く見られるが、リンパ節の切除(リンパ節郭清)を含めた手術を中心とした治療が行われ、予後(治療後の経過)がよいがんとされている。生命にかかわることはまれだが、一部の乳頭がんでは、悪性度の高い未分化がんに種類が変わることがある。高齢で発症するほど悪性度が高くなりやすいと考えられている。
    3. 濾胞がん
    4. 甲状腺がんのうち、約5%がこの種類のがん。乳頭がんよりやや高齢者に多い傾向があり、血液の流れに乗って肺、骨などの遠くの臓器に転移(血行性転移または遠隔転移)しやすい性質がある。治療後の経過は比較的よいがんとされているが、血行性転移した場合の予後はあまりよくない。
    5. 髄様がん
    6. 髄様がんは、傍濾胞細胞(カルシウムを調節するカルシトニンと呼ばれるホルモンを分泌する細胞)ががん化したもので、甲状腺がんの約1~2%に見られる。乳頭がんや濾胞がんよりも症状の進行が速く、リンパ節や、肺や肝臓への転移を起こしやすい性質がある。約2~3割は遺伝性(家族性)に起こるため、家族も含めて検査が行われることがある。
    7. 未分化がん
    8. 未分化がんは、甲状腺がんの約1~2%に見られるがんであるが、進行が速く、甲状腺周囲の臓器(反回神経、気管、食道など)への浸潤(広がり)や遠くの臓器(肺、骨など)への転移を起こしやすい悪性度の高いがん。特に高齢者に多い種類のがん。
    9. 悪性リンパ腫
    10. 甲状腺の悪性リンパ腫は、血液・リンパの腫瘍である悪性リンパ腫が甲状腺にできたもの。慢性甲状腺炎(橋本病)を背景にしている場合が多く、中でもその経過が長期にわたる高齢者に多いとされている。甲状腺全体が急速に腫れたり、嗄声(声がれ)や呼吸困難が起こることがある。
手塚 大介

手塚 大介

Daisuke Tezuka
AIC八重洲クリニック 循環器内科 科長
循環器内科専門医

循環器内科 主な疾患循環器疾患(心臓疾患など)
呼吸器の主な疾患
アレルギーの主な疾患
甲状腺の主な疾患
リウマチの主な疾患

循環器内科 外来のご案内

自由診療のご案内

主な疾患

循環器内科で行う検査

クリニック案内

  • Facebook AIC八重洲クリニック
  • 循環器内科専門医のブログ