虚血性心不全とは何か(その1)


 先日、プロ野球の元監督・野村克也氏の妻で、タレントの野村沙知代さんが突然死された件について、死因が「虚血性心不全」と発表され、その病名が注目を浴びています。確かに一般の方にもあまり聞き慣れない病名であると思います。
 
 虚血、つまり血液が足りない、というのは特に心臓の分野では「心筋」に血液が不足している状態を指します。心臓が動いているのは心臓の筋肉、すなわち「心筋」が収縮を繰り返しているからですが、その心筋を栄養する血液を出している冠動脈が動脈硬化により詰まってしまうことで、十分な血液が心筋にいきわたらなくなり(=虚血)、次第に心筋が壊死していきます。この状態を心筋梗塞といいます。

 心臓はポンプの働きをして全身に血液を送っていますから、心筋梗塞を起こした心臓では壊死した心筋の分だけ働きが落ち、弱いポンプの力になります。心臓の働きが落ちて、十分に全身に血液を送り出せない状態のことを心不全といいます。つまり虚血性心不全とは虚血が原因となって起こる心不全の状態のことをいうわけです。

 では、心不全とは具体的にどのような状態となるのでしょうか?
 全身に血液を送れなくなりすぐに影響が出てくるのは肺です。全身の血液は右の心臓から肺にいき、肺で酸素をもらいきれいな血液となって左の心臓にいきますので、心臓と肺は密接な関連をしています。ですから、心臓のポンプの力が弱くなって全身に送れない血液の分は肺にたまり、その結果すぐに呼吸困難になります(=うっ血性心不全)。呼吸困難の程度がひどければ、頭の働きも落ち、意識を失ったりします。


図1 心臓の構造と血液の流れ 静脈血(青矢印)は肺で酸素をもらい動脈血(ピンク矢印)になる

 虚血による心不全で怖いのは、ポンプの力が弱くなるだけではなく、心筋梗塞により心室細動という致死性不整脈が起きやすくなります。心室細動が一旦起こると、ショックと意識消失をきたし、ただちに電気ショックをかけないと、すぐに死に至る状態となります。この心室細動が突然死の原因となる最大の原因になります。よく公共機関にAED(自動体外式除細動器)など見かけることがあると思いますが、突然に発症する心室細動の人を救命するために置かれています。

 虚血性心不全が怖い病気だということがおわかりいただけたと思います。次回はさらに虚血性心不全という病気に秘められたことをお伝えします(次回に続く)。

循環器内科 手塚大介