冬に起こりやすい病気②―感染症の他、血管への負担が原因となる病気があります―

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前回:冬に起こりやすい病気①―感染症の他、血管への負担が原因となる病気があります―

 冬に起こりやすい病気②です。

寒冷刺激で心臓の冠動脈が一過性に細くなってしまう冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症が該当します。12月の記事で既にとりあげました。動脈硬化が原因で既に冠動脈がつまりかかっている状態にある労作性狭心症、心筋梗塞も、冠攣縮が誘因となり、冬に起こりやすいことが知られています。

 朝出勤時に外の冷気にふれ、歩いていると次第に胸が締め付けられるように痛くなり5-10分以上症状が継続する方は要注意です。

 冠動脈CTにより冠動脈の動脈硬化を評価することができます。冠動脈のCT撮影は施設により、被曝や診断精度が異なります。CTの被曝や造影剤の副作用を恐れる方もいますが、造影剤の禁忌事項がなく、胸部症状が著明な方はCTがお勧めされます。MRIでも冠動脈は評価できますが、血管内腔のみを画像化します。血管壁の情報は影絵のようにして知るしかありません。動脈硬化は血管壁に生じ、CTでは動脈硬化性プラークを明瞭に画像化し、空間分解能という画像の精度の指標もMRIに勝ります。

 
 冬は血圧が上がりやすいです。定期的に血圧を計測している方は、血圧が上がってきたと感じることがあると思います。ガイドラインで定めている推奨値140/90mmHgを基本の基準として、家庭での血圧測定状況、内服状況、お持ちのリスクファクターにより薬を増やすかどうかは決まってきます。血圧が上がりやすいと脳出血のリスクが上がります。脳梗塞や心筋梗塞の発症もこの血圧の上昇が一因となります。血圧の上昇は血管に負担をかけるため、目標値に達するように治療をすることが重要となります。

 血圧が上がりやすいというのは変動しやすいことと同じです。そのため冬にはヒートショック現象が起きやすくなります。脱衣場で倒れてしまった、浴槽内でお亡くなりになっていた、というのはこのヒートショックが原因である、と数年前にスポットを浴び、マスコミでもよく報じられてきました。寒い脱衣所では血圧が上がり、浴室では血管が拡張し今度は血圧が下がります。対策としては、脱衣場を温め、一方浴室内では長湯しない、半身浴にする、などにより、血圧変動が大きくなりすぎないようにします。

冬の血圧には十分注意が必要です。

冬に起こりやすい病気① ―感染症の他、血管への負担が原因となる病気があります―

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 今年の冬は寒いですね。防寒対策などしっかりしておきたいところです。寒いだけではなく乾燥もしているので要注意です。

 冬に起こりやすい病気には、インフルエンザウイルスやRSウイルスによる感染症があります。いずれも冬にウイルスが流行するため感染、発症します。口や鼻から入ったウイルスは、喉や気管支などの粘膜から体内に侵入し、発熱、咳などの感冒症状を引き起こします。特に乾燥していると、インフルエンザウイルスが喉の粘膜から侵入しやすく、ウイルスにとって好ましい環境になるといわれています。既に昨年末(2017年)より小さな流行がみられています。外出時のうがい、また帰宅後も加湿器の使用などにより部屋の湿度管理を行うことをお勧めいたします。

 感染症にかかるかどうかは、流行しているかどうかだけではなく、その人の体内の免疫力の状態に依存します。例えば周囲にインフルエンザの人がいたとして、私達が感染するかしないかは、接触の度合いにも影響されますが、その人の免疫力=体力にも関係します。流行時に感染しない人がいるのはこの違いです。もちろん、ワクチンを打っているか、ということもこの違いの原因の一つになります。

 従って、ワクチンやマスクでの予防も大事なのですが、睡眠不足や過労の状態は免疫力を低下させ、その結果感染しやすくなるため、そうならないことも大事です。体力低下時の過度の飲酒も免疫力を下げることが知られています。また、治癒についても同じことがいえます。免疫の状態が悪ければ、治癒に至るのも遅れることになります。

 感染症にかかりやすいもう一つの原因として体の「冷え」が挙げられます。冷えにより体の末梢の血流が低下して、ウイルスなどの異物が侵入しても、有効に免疫細胞が機能しなくなります。「冷え」は万病の元といわれるぐらい、体の状態を落とします。血液の循環により、酸素やエネルギーを供給したり不要物の輸送をしたりしていますが、こういった機能も落ちるので、何となくだるくなったりします。その上、「冷え」により交感神経も働かされてしまうため、血圧が上がったりもします。冬に血圧が上がり、循環器系の病気をもたらすことがあります。これは次の回でご説明することにいたします。

 体が冷えないように、日ごろから保温を心がけたいものですね。特にお風呂の後は冷えやすいから要注意です。
 (冬に起こりやすい病気②へ続く)

虚血性心不全とは何か(その2)

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虚血性心不全とは何か(その1)のつづきです。

 読者の皆さま、お正月はお休みになられましたでしょうか。
本年も宜しくお願い致します。

 前回、「虚血性心不全」のお話をしましたが、実はこの病名、我々の世界でもあまり使わない言葉なんです。通常「虚血性心疾患」という言い方をします。また虚血により心機能がおちた状態は「虚血性心筋症」という言い方をすることもあります。これらの言葉は元々英語から訳されたものが多く、虚血性心疾患であればIschemic heart disease、虚血性心筋症はIschemic cardiomyopathy、心不全はHeart failure、うっ血性心不全はCongestive heart failureという言い方がメジャーです。一方Ischemic heart failureという言葉は英語ではほとんど使うことがないと思います。

 では、どうして虚血性心不全という言葉を使うのでしょうか?ここからは私の類推です。
 厚労省からの指導になりますが、死亡診断書を記載する際には直接死因に、疾患の終末期の状態としての心不全は書かない、という注意書きがされています。つまり、癌であっても感染症であっても最後の死因は心臓が止まること、つまり心不全により規定されますので、全て死因は心不全になってしまいます。そうなると死因統計をとる都合上、死亡の真の原因がわからなくなるから、死亡診断書には心不全を死因としては書かないように、とされています。一方で今回の事例のように、本当に心臓が悪くて至った死亡もあります。これを区別するために原因としての「虚血性」を冠した造語が「虚血性心不全」であるのではないかと思います。実際に死因などで使用するケースが圧倒的に多いようです。

 虚血性心不全こわい、という言説が流布していますが、これは心筋梗塞にならないようにしましょう、という話しと同じです。つまり、心筋梗塞の病態はよくいわれる動脈硬化と同じ意味であり、高血圧、コレステロールの高くなる脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙、腎機能障害などがその主なリスクとして知られています。また最近では睡眠時無呼吸症候群もこのリスクになることが言われています。特に、高血圧、脂質異常症は大きなリスクになりますが、症状がないため健康診断で異常が出ても、なかなか億劫なので受診されない方も多いです。また喫煙をされる方も高リスク群に入ります。このような方は心筋梗塞、またそのなれの果てである虚血性心不全の発症には注意をされた方がよろしいです。

 一方で面倒だと思いつつも定期的な受診をして薬を服用し、コントロールされている方は少し安心です。心筋梗塞になるリスクが安全域まで下がっているはずといえます。
 
 では、心臓の冠動脈の動脈硬化の状態を知るにはどうしたらよいでしょうか?最も外来で行われる検査は、心電図や心エコー検査ですが、簡便な一方で間接的な評価になります。
 詳細に見るためには当院の得意とする冠動脈CTが一番です。当院の冠動脈CTは320列という高分解能のCTに加え、被曝も平均四分の一程に少ないことが特徴です。ただ少ないとはいっても被曝があり、造影剤という薬を使用するCTは何らかの症状などがある場合に施行されることが多いです。症状のない方は被曝がなく、造影剤を使用せずに撮影することができる心臓MRIを使ったドックが望ましく、心臓MRIでも冠動脈を十分見ることができます。
 症状のあるなしに関わらず、一度心臓の状態を知っておきたいという方は、当院循環器内科に是非ご相談ください。

循環器内科 手塚大介

虚血性心不全とは何か(その1)

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 先日、プロ野球の元監督・野村克也氏の妻で、タレントの野村沙知代さんが突然死された件について、死因が「虚血性心不全」と発表され、その病名が注目を浴びています。確かに一般の方にもあまり聞き慣れない病名であると思います。
 
 虚血、つまり血液が足りない、というのは特に心臓の分野では「心筋」に血液が不足している状態を指します。心臓が動いているのは心臓の筋肉、すなわち「心筋」が収縮を繰り返しているからですが、その心筋を栄養する血液を出している冠動脈が動脈硬化により詰まってしまうことで、十分な血液が心筋にいきわたらなくなり(=虚血)、次第に心筋が壊死していきます。この状態を心筋梗塞といいます。

 心臓はポンプの働きをして全身に血液を送っていますから、心筋梗塞を起こした心臓では壊死した心筋の分だけ働きが落ち、弱いポンプの力になります。心臓の働きが落ちて、十分に全身に血液を送り出せない状態のことを心不全といいます。つまり虚血性心不全とは虚血が原因となって起こる心不全の状態のことをいうわけです。

 では、心不全とは具体的にどのような状態となるのでしょうか?
 全身に血液を送れなくなりすぐに影響が出てくるのは肺です。全身の血液は右の心臓から肺にいき、肺で酸素をもらいきれいな血液となって左の心臓にいきますので、心臓と肺は密接な関連をしています。ですから、心臓のポンプの力が弱くなって全身に送れない血液の分は肺にたまり、その結果すぐに呼吸困難になります(=うっ血性心不全)。呼吸困難の程度がひどければ、頭の働きも落ち、意識を失ったりします。


図1 心臓の構造と血液の流れ 静脈血(青矢印)は肺で酸素をもらい動脈血(ピンク矢印)になる

 虚血による心不全で怖いのは、ポンプの力が弱くなるだけではなく、心筋梗塞により心室細動という致死性不整脈が起きやすくなります。心室細動が一旦起こると、ショックと意識消失をきたし、ただちに電気ショックをかけないと、すぐに死に至る状態となります。この心室細動が突然死の原因となる最大の原因になります。よく公共機関にAED(自動体外式除細動器)など見かけることがあると思いますが、突然に発症する心室細動の人を救命するために置かれています。

 虚血性心不全が怖い病気だということがおわかりいただけたと思います。次回はさらに虚血性心不全という病気に秘められたことをお伝えします(次回に続く)。

循環器内科 手塚大介

大動脈解離 -突然死の原因疾患―

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 先日私の伯父が大動脈解離で突然亡くなりました。大動脈解離といえば、つい先だってもアニメ「アンパンマン」のドキンちゃんの声優の方が亡くなったばかりです。
 突然死することも少なくない大動脈解離、この疾患は起こしやすい人がわかっています。発症のピークは70代男性が最も多く(私の伯父もそうでした)、高血圧や喫煙者など動脈硬化を起こしやすい人がリスクをもっています。特に高血圧で治療を放置している方は要注意です。また冬に起こしやすいことも知られていますが、冬には血圧が上がりますので、こうした関連があると思われます。
 では、大動脈解離とはどんな病気でしょうか?またどうして突然死してしまうのでしょうか?

 まず、解離というと聞きなれない言葉ですが、この疾患では血管(大動脈)の壁が裂けて、スペースができてしまい、そこを血管内腔のように血液が流れるようになってしまいます。本当の内腔(真腔)から、血管壁にあいたスペース(偽腔)に流れ込むところと、剥がれた部分が終わって元の真腔へ戻る部分ができます。あたかも川の流れが暴風雨によって、もう一つ別のところに流れができて、二つの川の流れになるようなイメージです。
 なお、ちなみに大動脈解離の親戚ともいえる大動脈破裂では、動脈が本当に裂けてしまうので、血管の外にどんどん血液がでてしまい、こちらも突然死の原因になります。

 上の図だけをみると、大動脈解離では血液は真腔に戻ってきてくれるのですぐに重篤な状態にならないようにみえます。しかし、偽腔の部分では血管が裂けているので、大動脈としての働き、つまり血液を送り出す機能が著しく落ちているため、仮にその本幹から横に分枝して派生する動脈があると、そこへは血液を送り出すことが難しくなります。上の図では動脈(b)は正常部分から分枝しますので影響はありませんが、(a)の血管では血管壁が裂けて脆弱した部分から分枝しますので、血流は低下します。つまり、この疾患でポイントなのは、解離がどこにできるかで重症度が全く違ってくるということです。

 一番危険なのは心臓から出てくる上行大動脈、という部分にできたときです。
 上行大動脈の根本には、心臓の筋肉を栄養する冠動脈の入り口があります。解離がこの部分を巻き込んでしまうと、途端に冠動脈の血流が低下して、心筋は虚血になり機能不全に陥ります。これは狭心症を急に起こしたのと同じような状態になります。さらにこの裂け目が心臓まで連続してしまうと、心臓の外側に血液がたまって心臓自体を圧迫して心臓が拍動できなくなってしまいます(心タンポナーデ)。徐々に心タンポナーデを起こすような状態も他にありますが、大動脈解離の場合は血管が裂けると血管の圧力や血液量が多いため、急速に心臓の周囲に貯留しタンポナーデになって、ショックを起こし、突然死を招来します。

 特に、急に発症した今まで感じたことのないような背部痛は、大動脈解離のサインとして知られています。大動脈解離の診断のゴールドスタンダードは造影剤を使用した胸のCTです。CTを撮影すると大動脈の断面が三日月のように見えて、真腔と偽腔がはっきり分かれているのがわかります。

 日本循環器学会ガイドラインによると、6割の方は病院に搬送前に亡くなられている、というデータがあります。冗談でピンコロリがいい、なんていう方も多いですが、しかし一方で突然の不幸な転帰により、周囲の方の深い悲しみとなったり、亡くなられた方の所持する物の処理が大変だ、という話も伺っています。

 今回は、大動脈解離について取り上げました。怖い疾患ですが、動脈硬化と深く関連する疾患であるため、予防するためには普段の生活習慣の見直しや早期発見のための健康診断が鍵となります。

循環器内科 手塚大介

冬に起きる心臓の症状について

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 寒くなり、知らず知らずのうちに胸の症状が気になりだしてご来院される方が多くなっています。胸痛、息切れ、心臓がどきどきする動悸(どうき)症状、この三つは心臓病を疑う代表的な症状ですが、冬場にも多くみられることが知られています。

 寒いとそれだけで自律神経に影響を与えます。特に、朝の外出時には交感神経の活動が強まり、血管を収縮し体熱を外に放散しないようにします。冬に血圧が上がってくるのはこの交感神経の働きのためです。また寒冷状態が心臓の筋肉をうるおす冠動脈に刺激し、朝の外出時に狭心症を起こすことも比較的多くあります。このタイプの狭心症は医学用語で使うような難しい漢字・言葉が入りますが、冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症といわれます。攣縮(れんしゅく)とはけいれんして収縮することを意味します。患者さんをみていますと、胸痛とともに胸がどきどきするような動悸症状を伴うことも多いようです。比較的若い患者さんにも起こり夜の安静時などにも多くみられます。

 この冠攣縮性狭心症がいったん起こると10-15分と比較的長く症状が続きます。悪いことに、冠攣縮により冠動脈が収縮した状態が続くと、心臓の筋肉にいく血流が低下し、心室細動のような致死性の不整脈が起こり、突然死する方がいます。

 冠攣縮の刺激となるのは寒さだけではありません。12月は師走といいますが、本当に忙しくなります。あいさつまわりや年内に終わらずべき仕事のシメ、夜の残業、忘年会の酒席、それから年末年始の準備などやらなければならないことがたくさんあります。
こうした機会に経験することが多いストレス、睡眠不足、疲労、過度の飲酒、また喫煙者では喫煙、その全てが肝攣縮性狭心症の発作の誘因になるのです。

 冠攣縮性狭心症は薬が効くタイプの狭心症です。主に冠動脈を拡張し広げるような薬を使用しますが、適切な投薬により発作は抑制できます。極まれに難治性の方では複数の投薬が必要となることがありますが、たいていはぴたっと効くのが特徴で、嘘のように発作がなくなるのもその特徴の一つです。

 症状を自覚している人は体から出される警告サインを正常に認識していると思ってよいと思います。困る場合は、時に働く人にとっては、仕事の忙しさに夢中になっていると、症状がでても「気のせい」「仕事が一段落しないと病院に行けない」などと思ってしまい、受診が遅れることです。

 もちろん、胸の症状は狭心症からくるものだけではありません。心身のストレス、呼吸器疾患、睡眠不足だけでも、息切れ、動悸などの症状が強くなる場合があります。
 12月に入り、空気が乾燥し寒くなっており、徐々に風邪にかかる人も増えているようです。忙しいこの時期だからこそ、睡眠をしっかりとるなどして体調管理に留意して、よい年末・年始を迎えたいですね。

AIC八重洲クリニック 循環器内科 手塚

ぎゅっと締めつけられる胸の痛み(労作性狭心症後編)

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 皆さんこんにちは。八重洲クリニック循環器内科です。循環器、というと一般の方にはなじみのない言葉ですが、心臓や血管を専門とする診療科です。

 今回は第2回目です。前回、冠動脈CTを勧められた患者さん、「冠動脈って何?」という疑問がふつふつとわいてきました。

 心臓という臓器はポンプのような働きをもち、全身に血液を供給しています。血液中には酸素(ヘモグロビンと結合している)、電解質(イオン)、栄養(糖、蛋白質や脂質)、の他、多数の化学物質が含まれており、生命を維持するには、血管系を通じて全身に重要な血液成分を供給することが必要なためです。

 心臓の中(心腔内)の血液は大動脈を通じて、全身にいきわたります。では血液を全身に送ってしまったら、心臓を動かすための血液はどこからとってくればよいのでしょうか? 下記の図をご覧下さい。

 上の図は心臓MRIからとってきたものですが、大動脈の他に左右に冠状動脈があります。言い方が違うだけで「冠状動脈」は「冠動脈」と同じです。

 王様が頭にかぶっている王冠は頭のまわりをぐるりとりまいていますね。心臓も同じです。心臓を動かしている筋肉(=心筋)に血液をまんべんなく供給するために、心臓の周りをとりまいている動脈を冠動脈といいます。

 ここで、冠動脈が出てくるところをよくみてください。大動脈に出て行くところの手前で、右と左の冠動脈に分枝がみられます。つまり、心臓は全身に血液を送る前に自分の分の血液を冠動脈から先に取っておく訳です。まず、心臓自身を養う血流がなければ、心臓自体も動くことができません。非常に理にかなった合目的な構造をしていると思います。

 さて、冠動脈は動脈硬化を起こすとつまります。すると心筋を灌流する血流が低下して胸痛をきたします。なぜ胸が痛くなるかというと、血流が低下して酸素供給量が低下すると心筋からキニンという化学物質が出てきて、これが神経を刺激するといわれています。

 労作をすると、体の骨格筋などの筋肉などに血流をたくさん送らなければならないので、心臓もたくさん働くことになります。エネルギー量が増えるため、心筋もたくさんの血流(酸素)が必要になります。それなのに心筋を栄養する冠動脈がつまっていたらどうなるでしょうか?皆さんはもうおわかりですね。血流不足になるため、胸痛をきたします。これが労作性狭心症の起きる機序です。

 今回は冠動脈と労作性狭心症の関係について解説させていただきました。

 まとめ

 ①労作性狭心症は動脈硬化を原因とした冠動脈のつまりによって発症します。

 ②冠動脈の状態を把握するには、冠動脈CTが有用です。

 当八重洲クリニックはMRI8台、CT2台を擁する比較的大規模な画像センターです。心臓疾患の診断に有用なツールも豊富に兼ね備え、技師や読影体制も確立しています。

 AIC八重洲クリニックでは、専門医が最新鋭の検査機器を使い、あなたの目に見えない病気を見つけ出します。
胸の痛みがある方は、是非一度、循環器専門医のいるAIC八重洲クリニック循環器内科にお問い合わせ下さい。

ぎゅっと締めつけられる胸の痛み(労作性狭心症前編)

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 皆さんこんにちは。八重洲クリニック循環器内科です。循環器、というと一般の方にはなじみのない言葉ですが、心臓や血管を専門とする診療科です。

 日本人の死因第1位はがんですが、第2位は心臓疾患です。昨今、心臓疾患はカテーテル治療や体内埋め込み式デバイスが発達しており、治療の進捗が著しい分野でもありますが、未だにこれで命を落とす方が多いのは循環器科医として残念に思うところです。

 これからシリーズで心臓の症状と、その症状ではどのような病気が疑われるのか、あるいはどんな画像診断をするのか、簡単にお示ししたいと思います。お示しする動画は一般の方が理解しやすいようにかなりシンプルにまとめてあります。そのため当院の実際の診察内容とは異なります。医家の方がご覧になると、少しシンプルすぎはしないか、と思われるかもしれません。本動画のコンセプトをご理解いただければありがたく存じます。

 実際、循環器診療における問診(医療面接、病歴聴取)は非常に重要であり、問診だけでかなり時間をとる場合もあります。循環器科医の大半は話しを聞いただけで病気のあるなしがわかるほどです。

 ただ、問診や診察でのみたては、医師の技量や経験に依存します。それを実際に証明するのは画像診断です。心臓画像診断も、治療技術が向上しているのと同様に、体の中という「ブラックボックス」を可視化し、冠動脈硬化や心筋の形態や異常を描出するのに優れています。

 動画の第一回目は狭心症(労作性)です。胸の痛みがでる病気は多くありますが、労作性狭心症の大きなポイントは以下です。

 ①2~3分といった数分間続く胸の痛み。特に締め付けるような胸の痛みがある。

 ②身体を動かしたとき(労作時)の胸の痛みがある。

 労作のたびに症状が起こる、これを再現性のある、と表現しますが、再現性のある症状の場合、狭心症を強く疑います。狭心症の診断方法は古典的には心電図ですが、相当悪くならないと所見に現われないことがあり、心電図で全て診断できる訳ではありません。

 狭心症の痛みは胸を強く締め付けられるようなもので、一瞬ではおさまりません。数分持続し、ひどいときは動けなくなります。

 ただ症状の程度、起こる体の場所、持続時間はケースによって千差万別で、特に訴え方は患者さんのパーソナリティによっても異なりますので、症状を聞いただけで決定できるとは限りません。

 そのため、まずは冠動脈CTで狭心症の原因となる冠動脈のつまりがないかどうか、検査をして明らかにする必要があるのです。

 当AIC八重洲クリニックはMRI8台、CT2台を擁する比較的大規模な画像センターです。心臓疾患の診断に有用なツールも豊富に兼ね備え、技師体制や読影体制も確立しています。

 胸の痛みがある方は、是非一度、循環器専門医のいるAIC八重洲クリニック循環器内科にお問い合わせ下さい。