わかっていてもできないダイエット ―食事療法はどうやるか― 連載第六回目

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 前回は朝の起きてすぐの体重測定が大切で、その値により1日の食事・運動の量を加減しコントロールすることにつなげましょう、というお話しでした。
 食事療法の基本は「食べる量を減らす」ことにありますが、お話しを伺うと「そんなに食べていないのに体重が減らない」という方が一定数おられます。

 しかし具体的に聞いてみると、実際にはたくさん食べている人もいます。また、食事量としては本当に多くない人もいます。それほど食べていないのに体重が減らないのはどうしてでしょうか?
食べる量が多いか少ないか、という問題を考えるとき、食べた量の絶対量で考えがちです。しかしダイエットすることを前提とすると、運動や生活の中でカロリーを消費している量が食事で摂取するカロリーより多いかどうかで決まります。

 運動をちっともしない人、仕事をしていても座ってばかりで石のように動かない人はカロリー消費をしない訳なので、食べた量が少なくても体重が減らないのです。「私は頭を使っている」という人もいますが、一日に脳が消費するカロリーは200-250kcalとされています。一般のコンビニ弁当は700kcal程あるので、脳の使っている量は大したものではないことがわかります。

 相対的に食事量が多い場合には運動を増やして、食事量をさらに減らす、つまりカロリーをためる方(=食事)と使う方(運動)との両方のバランスで考え、使う方を多くしましょうということになります。

 私の考える食事療法の基本は①トータルのカロリー量を減らす、②糖質を制限する、が基本です。例えば朝、ご飯を一杯食べているのであれば、半分とか三分の二とかにして必ず残すようにします。お酒を飲んでいるのなら半分にするなど。今まで標準的に食べていた量から減らしている、という感覚をもつことが大切です。おやつを食べていればおやつは禁として食べなくします。
 
 人によってはこの「減らす」ということがかなりつらく感じる方がいらっしゃると思います。
 
 この減らす際につらくならないようにする幾つかのコツがあります。
 
 ①食事に時間をかける
 
 短い時間で食べようとすると、よく咀嚼せずにお腹に飲み込んでしまいます、そうするとたくさんの量を食べられてしまうため、これもカロリーオーバーの原因になります。よく噛むと唾液の水分が混ざり、さらに唾液アミラーゼで糖質は分解されますので、膵臓への負担が減ります。その結果、満腹感が得られることになります。コロナ禍で食べながら会話したりすると飛沫が飛び、感染の原因になるので、黙食が増えてきました。でも本来は話しをして長い時間をかけるのが望ましいです。従って、話す代わりによく噛み唾液を分泌するようにしましょう。唾液分泌は免疫力強化にもつながります。コロナ禍にもお勧めされる食事方法であると考えられます。
 
 ②一口で食べる量を多くしない
 
 大食い・早食いの人は一口にたくさんの量を詰め込んでいる訳ですが、その逆がお勧めになります。一口に詰め込む量を少なくすることで、少ない量で満腹感を得られることができます。先ほど言ったよく噛むことにもつながります。最初は食べた気がしないかもしれませんが、慣れの問題で、時間が経てば新しい食べ方でも前の食べ方と同じようにお腹がいっぱいになると思います。お酒を減らすときも、一口にいれる量を減らしてみて、時間をかけてみてください。案外容易に酒量を少なくできると思います。
 
 ③食事前に水分をとる、など食べる順番を工夫する
 
 空腹でまずひと口目に白米やメインのお肉などをがっつり食べる人が多いですが、これはダイエットには向いていない食べ方です。何故なら、高いカロリー量を短時間に食べられてしまうからです。
 
 ではどうすればよいかと言うと、例えばカロリーの高そうな肉料理がメインの場合の話しをします。お茶やみそ汁、スープなど水分から先にとります。次に、野菜や副菜、豆腐、豆などのタンパク質、海藻類などの低カロリーのものを食べます。それからやおらメインの肉料理を食べます。ごはんを食べるときもいつもより半分の量をひとくちにいれ、小分けにするのがよいです。このように減らしたいと思う高カロリーのものを最後に回すと、そう多くは食べられなくなります。

 ごはんを最初にがっつり食べたい人にとっては不評かもしれないこの食べ方ですが、自分が試した限りでは、結構お腹がいっぱいになるので、お肉や白米が少しでも、それをしっかり味わうことで満足できるようになります。さらに、このような食べ方をすると不思議なのですが、以前よりも多くの量を食べられなくなります。胃が小さくなるのでしょうか。肥満治療のための胃切除術が最近注目されていますが、食習慣を変えることで手術をしなくても胃が小さくなってくれれば、お得なことになります。一度試してみることをお勧めします。

循環器内科 手塚大介