胸が痛い(胸痛)外来では

「胸痛」と一言でいっても、色々な症状があり、人によって訴え方もまちまちです。「胸がぎゅっとしめつけられる痛み」「胸が圧迫される」「胸が何となく重い」「胸がちくちくする」「胸がぴりぴりする」「胸の痛みとともに、歯や肩まで痛くなる」などなど。これらは全て胸痛外来で扱う症状です。

「胸が痛い」、その時には誰もが不安に思います。また、症状が持続する訳ではないから騙しだまし仕事をしている…そんな方も居られるのではないでしょうか?
胸が痛いという症状の裏には、様々な病気が潜んでいる可能性があります。その中には生命を脅かす重篤な病気もあります。

少しでも不安に感じたら、早めに受診することをお勧めします。

当院では、適切な検査を行うことにより胸が痛い原因を究明し、適切な治療を行うことを心掛けています。

胸痛に関し当院で行う検査について

検査1:心電図、24時間ホルタ―心電図

1)心電図

心電図検査心臓の筋肉は洞結節から出る電気の信号により動くことができます。心臓が全身に血液を循環させるために拡張と収縮を繰り返すとき、微弱な活動電流が発生します。その変化を波形として記録することで、例えば心筋梗塞や不整脈などの疾患を診断することができます。健康診断などで病気発見の最初の一手としてよく用いられます。

2)24時間ホルター心電図

24時間ホルター心電図小型軽量の装置を身につけて、日常生活中の長時間の心電図を記録して、これを解析して観察する検査です。 不整脈は出たり出なかったりするため、実生活の中で長時間の心電図を記録し続けるこの検査が欠かせません。記録した波形をみて症状との関連を調べたりすることもできます。

検査2:エコー検査 … 心エコー、頸動脈エコー

エコー検査とは、超音波を対象物に当てて、その反射を映像化することで対象物の内部の性状を調査することのできる画像検査法の一つです。

1)心エコー

心エコー主に、以下二つの診断を目的としています。

1.心臓の形の異常を発見する形態的診断
2.心臓の働きを見る機能的診断

特に、心臓は常に拍動していますが、その動いている状態をそのまま観察できるとても有用な検査です。 心室や心房の大きさや壁の厚さ、壁の動き、弁の形態や動きなどがわかり、心臓の基本的機能を判断することができます。

2)頸動脈エコー

頸動脈エコー頸動脈に対して行う超音波検査のことで、主に動脈硬化の状態を見ることができ、簡便で視覚的に動脈硬化の診断が出来る検査です。

また、全身の動脈硬化の程度を表す指標を評価できるだけでなく、脳血管疾患に対する評価にも用いられます。

 

検査3:CT検査 … 造影CT(心臓冠動脈、大動脈、下肢動脈)

当院で行っているCT検査は以下の4種類です。

1)冠動脈(心臓)CT検査:造影検査

冠動脈(心臓)CT検査冠動脈を直接見るための方法として心臓カテーテル検査があります。カテーテルとは柔らかいビニールの管(経2~2.5mm, 長さ100㎝)のことで、これを足の付け根の動脈または手首や腕の動脈から挿入します。この動脈に挿入したカテーテルをさらに心臓まで到達させて造影剤を冠動脈に直接注入し、X線で造影剤の影を画にして冠動脈病変を診断します。心臓カテーテル検査は動脈内にカテーテルを通すので、時に重大な合併症が起こり得ます。したがって、急性心筋梗塞や狭心症が強く疑われる「患者」に対してのみ行われます。2004年に冠動脈CT検査が登場してからは心臓カテーテル検査を行わなくても比較的簡便に冠動脈を映し出すことができるようになりました。

冠動脈(心臓)CT検査CT装置は身体を透過したX線を検出しコンピュータで断層像を得る装置です。CT装置には4列、8列、16列、64列、256列、320列のX線検出器が搭載されたものがあります。このX線検出器が多いほど撮影範囲が広いことを意味します。

当院では被ばく量の低い機器を使用して検査をしております冠動脈 CT 検査では64列以上のCT装置が利用されます。心臓カテーテル検査で得られるような形態的な診断に加えて、冠動脈内の血管壁にできたプラークの性状評価も可能となり、多くの情報が短時間で得られるのが特徴です。当院で導入している最新型320列CTは、1心拍0.275秒で撮影が完了(数秒の呼吸停止)し、最新の被ばく低減ソフトウェアを導入したことにより、CT 検査で問題となる放射線被ばくは、以下のように低減しています。

被ばく量の差

日本国内で普及している64列CTとの差:当院で使用する320列での検査を1とすると、64列では15倍被ばくします。

被ばく低減ソフトウェアが搭載されていない320列CTとの差:当院での検査を1とすると、被ばく低減ソフトウェアが搭載されていない同機種の検査では4~8倍被ばくします。

2)冠動脈カルシウムスコア検査:非造影検査

冠動脈カルシウムスコア検査冠動脈(心臓)CT検査を行う際に、冠動脈カルシウムスコア検査(冠動脈の石灰化程度の診断)を行います。冠動脈石灰化スコアは動脈硬化を評価することにより、将来の心筋梗塞の発症の予想(心臓突然死を予測)をある程度行うことができると考えられています。高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴などの心筋梗塞の危険因子を加味することで、さらに詳しく冠動脈疾患の発症する危険度を予知することが可能になります。

当院ではカルシウムスコア検査の結果を利用し造影検査の撮影条件を決定します。低被ばくソフトに頼るだけではなく、撮影条件自体を最適化することで放射線被ばくを最小限に抑え、造影剤の使用量を最小限に抑えることが出来るようになります。これらの条件設定により、安全かつ精度の高い心臓CT検査が可能になります。

3)大動脈、下肢動脈CT検査:造影検査

大動脈、下肢動脈CT検査:造影検査大動脈瘤には、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、心臓から腹部にまで達するような広範囲な動脈瘤も存在します。大動脈瘤はほとんどが無症状で、腹部大動脈瘤の場合は、胃潰瘍や胆石症などの消化器疾患を診断するために腹部を触診した際、しこりが拍動していていることで発見されたり、超音波検査や CT 、MRI検査で偶然発見されることがあります。症状があっても痛みが、関節(脊椎)の痛みなのか、臓器の痛みなのか、心臓なのか、動脈瘤などから来る痛みなのか、症状だけでは判断することができないことも多々あります。

閉塞性動脈硬化症(ASO)は下肢動脈に動脈硬化が起こって血管が狭くなったり、プラークで血管が詰まることで下肢を流れる血液が不足し、脚(足)がしびれたり、痛みを伴って歩くことが非常に困難になってしまう血管の病気です。重症の場合、下肢の抹消の細胞、つまり、足や足指の細胞が壊死してしまうので足自体を切断しなければならない場合もあります。

このような大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症など広範囲に及ぶ血管の病気を診断するために、320列 CT が活躍します。実は、これらの病気を診断するためにも今までカテーテル検査が中心となっていました。320列 CT は全身を高速スキャンすることが可能なので、検査時間が非常に短く検査による苦痛を伴いません。大動脈から下肢動脈に及ぶ広範囲に発生する動脈瘤や動脈硬化を一度の検査で診断することができるので、様々な血管の病気を見つけ出すことができます。血管の病気が末期となる前に早期診断、早期治療を実現することが可能です。

4)アブレーションCT検査:造影検査

アブレーションCT検査カテーテルアブレーション手術は不整脈の根治療法のひとつです。大腿部(足の付け根)の静脈から先端に電極の付いたカテーテルを挿入し心臓まで到達させます。不整脈の原因部位へ留置し、カテーテルの先端に高周波電流(交流電流)を流すことにより異常部位を焼灼(しょうしゃく=アブレーション)します。最近では、液体窒素を用いた冷凍凝固アブレーションなどもあります。

アブレーション手術は主に頻拍性上室性不整脈に対して、根治的治療を行います。1回、または、2回の治療でほぼ根治すると言われていますが、中にはアブレーション手術自体は成功しても、不整脈が再発してしまう例が存在します。アブレーションCT検査心房のサイズが再発に かかわる因子のひとつであると報告されているため、心房細動のカテーテルアブレーションを行う際、左心房および肺静脈の相互の位置関係や形状の把握が極めて重要です。解剖学的な情報を前もって得ておくことが,アブレーション手術の治療予後の予測に役立つと考えています。

当院では冠動脈を撮影するのと同様な手技で、左心房を中心としたアブレーション手術シュミレーション画像解析を行います。アブレーション用CTでは以下の画像作成、評価を行います。

1.右上肺静脈、右下肺静脈、左上肺静脈、左下肺静脈の基部(焼灼標的部位)を入れた左心房三次元(3D)画像の作成
2.内視鏡モードによる左心房内3D画像作成
3.左心房と食道の位置を確認するための3D画像作成
4.左右横隔神経の位置を確認するための3D画像作成
5.CT元画像により、左心耳内、左房内血栓の有無の評価

冠動脈評価(重症な不整脈があっても可能な範囲で評価)

検査4:MRI検査 … 遅延造影MRI、負荷perfusion検査など

当院で依頼がある心臓・血管MRI検査の種類は以下の4種類です。

上記の検査は、以下検査の組合せによって実現しています。

1)心筋負荷パーフュージョンMRI検査:造影検査

心筋負荷パーフュージョンMRI検査心筋負荷パーフュージョンMRI検査心筋に血液を送る冠動脈に狭窄があると、労作(運動) 時に心筋虚血による胸痛が起こります。心筋虚血を診断するためには、運動による負荷をかけて心筋血流を増やす必要がありますが、運動をする代わりにATP製剤(アデノシン三リン酸)を利用すると、心筋血流を増やすことができます。ATP製剤を静脈から持続注入すると心筋血流が増えるため、実際に運動をして心臓に虚血状態を作ることなく安全に検査を行えるというメリットがあります。左腕からATPを持続静脈注入した状態で、右腕から造影剤を急速に静注すると、血液が充分に流れているところと、血液が行き届いていない領域(虚血領域)を鑑別し診断することが可能です。

2)心筋遅延造影(LGE)MRI検査:造影検査

心筋遅延造影(LGE)MRI検査造影剤を静脈から注入し、心筋を造影し数分後に特殊な条件でMRIの撮像を行うと、心筋がダメージ(線維化)を受けている箇所がわかります。従来の核医学検査(心筋タリウムSPECT検査)では評価が困難であった心内膜下梗塞などの心筋梗塞の診断が可能です。加えて、心筋梗塞部位の心筋全体の生存の状態がわかるため、冠動脈血行再建治療の適応の判断などができます。その他に心臓疾患には心筋症と呼ばれる疾患群があります。心筋症には心臓が大きくなり動きが低下する拡張型心筋症、心筋の壁が厚くなり著明な肥大をきたす肥大型心筋症、サルコイドーシスの心臓病変(心サルコイドーシス)、心アミロイドーシス、Fabry病などが挙げられますが、こうした心筋症の診断に有用です。また関節リウマチ、強皮症、多発筋炎・皮膚筋炎などの膠原病・自己免疫疾患に伴う心筋炎・心筋症の診断にも有用です。遅延造影検査での陽性所見はその疾患の予後を規定する因子にもなっているので、治療上の重要な指標になります。

3)シネ撮影(心機能評価):非造影検査

シネ撮影(心機能評価)心筋遅延造影(LGE)MRI検査シネ撮影により、心臓の動きの評価や心臓が全身に血液を送りだす機能をみることができます。実際には、心電図と同期させることで心エコー検査のような任意断面の心臓シネ撮影(動画撮影)を行い、これらの画像をワークステーションソフトに読み込ませて心機能解析を行います。心エコー検査のようにいつでもどこでも出来るという簡便さは無いものの、心臓の任意断面を患者の体型などに左右されずに正確に得ることが出来るため、心臓の重さや拍出する血液量を正確に計測することが可能です。

4)冠動脈 MRA検査:非造影検査

冠動脈 MRA検査放射線被ばくや造影剤を用いることなく冠動脈を直接見ることのできる唯一の方法です。血管の走行異常の確認や血管が動脈硬化によって細くなっている状態を立体(3D)画像を作成して診断を行います。放射線や造影剤を用いることなく診断が可能なため、患者様のお身体のご負担が少なく、なおかつ心臓の病気の早期診断、早期治療に役立てられます。但し、MRI 装置を利用して冠動脈を撮影するためには、技師の高度な技術と知識が不可欠であり、限られた医療機関でしか検査ができません。当院では2003年から冠動脈 MRA 検査を実施しており、在籍する技師は豊富な経験と高度な技術を身に付けています。冠動脈MRA検査は、

(1) 対象患者の年齢が若い 
(2) 閉経前の女性で冠動脈病変のリスクが低い
(3) 冠動脈病変の否定をするために画像診断を行いたい
(4) MRI検査に耐えられ息止めができる

このような患者様の場合には冠動脈 MRA 検査がよい適用となります。

5)大動脈 MRA 検査:非造影検査

腹部大動脈胸部大動脈動脈硬化は加齢と共に血管壁が硬くなる病的変化で、全身の血管に起こります。特に細い血管に起こりやすく、心臓の冠動脈(5mm以下)、腎臓の動脈、眼の動脈に起こります。また脳の動脈、胸や腹を流れる大動脈、足の動脈などに起こります。さらに、これらの動脈硬化が進むと心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤など命の危険にさらされる重篤な疾患をきたします。従って自覚症状のない動脈硬化症ですが、日ごろから検査をするなどして気をつけることが肝要です。特に動脈硬化は高血圧や高コレステロール血症、糖尿病、喫煙などで起こりやすく、このようなリスクをお持ちの方は動脈硬化の検査をするとよいと思われます。

高血圧の場合日ごろから血圧を測ることで気づくことができます。しかし血圧測定で使用する上腕の動脈は高血圧になることはあっても、足の動脈に比べると、動脈が細くなりつまったりすることは頻度的には少ないです。足の動脈は普段血圧を測る機会がないばかりか動脈硬化が進むと、血流が少なくなり、歩行時の冷感、しびれ、疼痛などの症状をきたします。このような病気を閉塞性動脈硬化症といい、放置しておくと足が壊疽、つまり腐ってしまい、残念ながら切断に至る方もいらっしゃいます。最近の画像診断法の発達により適切な診断が可能となっているため、悪くなる前にバイパス術や最近ではカテーテルという管をいれて動脈硬化で狭くなった血管を広げる治療が可能になっているため、壊疽にまで至ることは少なくなっています。そのため、ここでご紹介するABIという検査により足の動脈硬化を調べることが重要です。

閉塞性動脈硬化症のリスクのある方は、心筋梗塞のリスクのある方と似ていて、喫煙歴、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧の方に多く発症します。このようなリスクをお持ちの方は一度当院のABI・CAVI検査をお勧め致します。この検査は血圧測定と同じ感覚でできますが、一般にある家庭用の血圧計では測定することができません。実際には"あお向けに寝た状態で両腕・両足首の血圧と脈波を専用の機器を用いて約5分程度測定する"という簡便な検査で足や全身の動脈の動脈硬化の程度を評価することが可能です。

この検査では下記の動脈硬化症の診断で重要な3つの評価を行うことが出来ます。

1. 動脈の詰まり具合(ABI)
2. 動脈のかたさ(CAVI)
3. 血管年齢

1)ABI(エービーアイ:Ankle Brachial Index)

ABI検査ABI計測風景上腕の血圧と足の血圧の比率を計算することにより、足の動脈の詰まりを評価します。横になった状態で「腕の血圧」と「足首の血圧」の比をみて足の動脈の詰まりを診断します。通常足の動脈につまりのある場合は足の血圧が下がり、ABIも低下します。ただし、糖尿病や腎臓透析療法をされている方は下肢の血管の硬化が進んでいるため、異常高値を示すことがあります。こういったケースでは足の動脈の虚血の指標として用いることはできません。

2)CAVI(キャビィ:Cardio-Ankle Vascular Index)

大動脈起始部から足の血管までの動脈の弾性、つまり"血管のかたさ"を評価します。値が高ければ高いほど硬く、動脈硬化が進んでいると評価します。ABIと同様に横になった状態で上腕から足の動脈までの脈波を測定し、特殊な計算式により動脈の弾性を評価します。

3)血管年齢

健康な方のCAVI平均値を装置がデータとして持っています。同じ性別、同じ年齢の平均値と比較することで「血管年齢」を算出します。CAVIの値だけでなく、同年代の血管年齢と比較することで多角的に動脈硬化を診断します。

胸が痛いときに考えられる病気

胸が痛い原因として考えられる病気を挙げてみました。
胸の痛みは心臓や肺に原因が隠れていることもあり、直ちに処置を行わないと死につながる恐ろしい病気の場合もあります。

胸が痛いときに考えられる病気

胸が痛い時に合併して起こる他の症状

次に胸が痛い時に合わせて良く起こる症状についても触れておきます。胸が痛いという主たる症状に隠されていますが、合わせて起こる症状が正確な診断のために非常に重要です。

このような症状がある場合には、問診時に申し出てください。

胸が痛いときに考えられる病気

1.狭心症(心臓疾患1)

運動時、歩行時など体に負担がかかった状態で胸がしめつけられるような痛みや息苦しさが繰り返し出ます。普段の生活では特に症状に変化は無いものの階段の昇降時や寒い日など、心臓に負担がかかる日に胸がしめつけられるような痛みや息苦しさが出たりすることもあります。また、左腕にしびれが出る、歯が痛くなる、など、これらの症状が狭心症のサインです。胸痛があまり起こらず、動悸や息舌しさなどを感じるケースもあります。正常なときは心臓の鼓動を意識しませんが、狭心症になると、心拍数が増えたり、不整脈のために脈が飛んだりする場合があり、動悸として感じられることがあります。
狭心症は心臓の筋肉に栄養を与える冠動脈と呼ばれる血管に動脈硬化が起こることにより、胸痛をきたす病気です。冠動脈の動脈硬化が進むと、血管内腔が狭くなり、心臓の筋肉に充分な血液を送ることができなくなってしまい、心筋が一時的な酸素不足におちいり、胸痛が起きます。特に運動、階段昇降時など、体に対する負荷がかかると胸がしめつけられるような痛みや息苦しさ等の症状が出現します。
狭心症が悪化し、冠動脈が完全につまってしまった場合は心筋に血流がいかなくなるため、心筋が壊死してしまいます。この状態を急性心筋梗塞といいます。最近では急性冠症候群ということが多くなりました。急性心筋梗塞は心不全や致死性不整脈を惹起しますので、治療せずに放置すると死につながる重篤な疾患です。
狭心症の段階で適切な処置を講じる必要があると認識してください。

2.心筋炎(心臓疾患2)

寒気や発熱、頭痛、筋肉痛、全身がだるいといった風邪に似た症状の後に、胸が痛い、不整脈、心不全のような臨床徴候が現れることがあり、このような場合は心筋炎を疑います。
心筋炎とは心臓の筋肉(心筋)にウイルス感染などがきっかけとなり、炎症が起こる病気です。心筋内の炎症により心筋がダメージを受けて、心臓が血液を全身に送り出すポンプとしての働きができなくなることがあり、重篤な場合は命を脅かすこともある疾患です。
このため、風邪を契機に心筋炎となる場合が多く、心筋炎は突然起こる病気でもあり、全く予測不可能です。心筋炎に移行したため、心臓が血液を送り出す機能が低下する心不全を発症してしまい死亡するというケースもあります。また、心筋炎は高齢者や子供だけではなく誰にでも起こる可能性があります。
ただの風邪とあなどらず胸の異変を感じた場合には直ちに受診をしてください。

3.大動脈解離(心臓疾患3)

激しい胸の痛みや背中の痛みが生じ、その痛みは喉や腰にまで進むこともあります。神経に十分な血液を送れず一時的に手足に麻痺が出る方もおられます。
大動脈解離は大動脈という大きな血管の壁が裂けてしまい本来の血管とは別のルートでも血液が流れてしまっている極めて危険な状態です。心臓の出口まで大動脈がさけたりする場合や、血管がふくらみ破裂してしまうこともあり、放置すれば発症後48時間以内に50%、2週間以内に80%以内の方が死亡すると言われています。
大動脈解離の背景には動脈硬化や高血圧などが潜んでいる確率が非常に高いことが知れられています。動脈硬化、高血圧を軽く見ないで早めに対策を講じてください。

4.心筋梗塞(心臓疾患4)

全員に激しい症状が生じる訳ではありませんが、症状が生じる場合、強い胸の痛みがあります。特に胸の真ん中から左胸、左腕の内側、みぞおち、喉や顎などに痛みがある場合は特に注意が必要です。痛みの特徴としては「圧迫感」、「締め付けられる様な感じ」、「焼けつくような感じ」など様々で姿勢を変えても痛みが変化せず、30分以上痛みが続きます。

胸の痛み以外には左腕の痺れ(しびれ)、腹痛、吐き気、動悸、呼吸困難、失神、冷汗など様々な症状が現れることがあり、ひどい場合では心臓が停止してしまうこともあります。特に胸の痛みに加えて失神や冷や汗がある場合は注意が必要といわれています。
急性心筋梗塞は狭心症(動脈硬化により血管が狭くなった状態)の悪化が原因で起こります。狭心症の血管内に生じたプラーク(粥腫、じゅくしゅ)と呼ばれるものが剥がれて血管を塞いでしまうこと等が原因とされています。胸に激痛が起こり、痛みは30分から数時間続くことがあります。血流が止まると心筋の壊死がはじまり、その範囲が広がると、血圧が低下して顔面が蒼白になるとともに、吐き気や冷や汗などがみられたり、意識を失って死に至ることもあります。
心筋梗塞とならない狭心症の段階で適切な対策を講じることが重要となります。

5.心房細動(心臓疾患5)

胸の痛み以外に「胸のドキドキ」、「胸の不快感」、「動作時の息切れ」等が代表的な症状です。心臓は心房と呼ばれる心臓の上の部分から心室と呼ばれる心臓の下の部分に刺激が送られ心臓全体が収縮します。心房細動になると心房が1分間に300~500回も痙攣(けいれん)するように動きます。その心房の細かな動きの結果、心臓が収縮するリズムが乱れてしまい心臓は上手く働くことができなくなります。
心房細動の注意すべき点の一つは、心房細動の結果、心室の動きが速くなって頻脈になることです。おおよそ1分間150回以上の頻脈が長く続くと、心臓(心室)の働きが悪くなって心不全という状態が起こる可能性があります。
心房細動でこわい点の二つめは、心房に血栓(血の塊)ができやすく、それが血流にのって脳などの動脈に流れ込んで、ふさいでしまう脳塞栓症を起こす可能性が高まることです。心房細動により脳塞栓を起こした場合は、広範囲の脳がダメージを受けやすく、また出血を伴うこともあるので、麻痺や失語などの神経症状を伴う他、場合によればお亡くなりになる方もいらっしゃいます。動悸のある方は放置せず、心電図や24時間の心電図であるホルター心電図により心房細動などの不整脈があるかないかを調べることが重要です。

6.気胸(肺疾患1)

気胸とは肺の表面にブラと呼ばれる風船のようなものができ、それが破れることで肺の空気が外にもれてしまい、肺を圧迫して押しつぶしてしまいます。
気胸による胸痛の特徴は、何となく胸の辺りが痛く、肩までの広い範囲であまり激しくない痛みであることが多いです。肺が押しつぶされる影響で息を吸っても肺がふくらみにくく、息苦しさを訴えられる方が多いのが特徴です。
軽度の方の場合は無症状で自然治癒することもありますが、漏れた空気が心臓の方を圧迫して血流が阻害され急激な血圧低下などの重篤な症状を招き、死に至るケースも存在します
息苦しさを感じた場合には胸に痛みが無い場合でも、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんの危険性もある為、早めの受診をお勧めします。

7.胸膜炎(肺疾患2)

胸膜炎とは胸膜(肺を包んでいる薄い2層の膜)の炎症により起こる症状で、感染症(主たる感染症は結核や細菌感染)や悪性腫瘍(主たる悪性腫瘍は肺がん)を主たる原因として起こります。
胸痛が深呼吸や咳(せき)で増悪(ぞうあく)するのが特徴です。原因が感染症であれば、発熱を伴います。咳も出ますが痰は少なく、胸水が増えてくると呼吸困難を感じるようになります。

8.心臓神経症(精神疾患)

心臓に特に異常が無いにも関わらず胸の痛みなどの異常を訴える状態です。動悸や不安・焦燥感・抑うつ感などの精神的な症状も合わせて起こることがあります。
心臓神経症は自律神経失調症の一つです。ストレスや過労、不安感を感じると自律神経の内、交感神経と呼ばれる神経が活発になります。交感神経は身体を興奮させる神経ですがこれが働くことにより心臓のリズムが早まり動悸を感じることがあります。この動悸を心臓病と勘違いして心臓神経症が発症すると言われています。

9.肺血栓塞栓症(その他1)

肺血栓塞栓症とはエコノミークラス症候群という名で広く知られている病気です。飛行機のエコノミークラスで旅行すると、長時間狭い椅子に座ったままの状態を強いられることが多く、足の血液の流れが悪くなり、静脈の中に血の塊(静脈血栓)ができることがあります。この静脈血栓は歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺に到着し、肺の動脈を閉塞してしまいます。肺梗塞ともいいます。
肺血栓塞栓症での症状は、胸の痛みの他に息切れ(呼吸困難)や、冷や汗、失神、動悸、発熱、咳(せき)等が起こります。突然の意識消失や心停止が起こることもある非常に恐ろしい病気の一つです。
肺血栓塞栓症の原因は1)静脈の血液の流れが(長時間足を動かさないことで)よどんでいる場合、2)静脈の血管が傷ついた場合、3)血液が固まりやすい体質を持っていること(血液検査をすることで判明しますが、1,000人に2-5人程度の確率です)が主たる原因として列挙されます。

10.逆流性食道炎(その他2)

逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流することで起こる症状ですが、胃酸は本来、下部食道括約筋という筋肉の働きにより食道に逆流しないようになっています。ストレスや食生活が偏ることで胃酸の分泌が増えた際や食べ過ぎや加齢で下部食道括約筋が緩んだ際に胃酸が逆流して逆流性食道炎を発症することがあります
この病気による症状は、胸の痛みの他に胸焼け、咳、声がれ、口臭が生じます。特に食後の胸やけ症状などは本疾患を疑う症状です。

11.帯状疱疹(その他3)

帯状疱疹とはウイルスにより身体の左右どちらかに疱疹(ほうしん)ができる症状です。これは子供の頃に感染した水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスが身体の奥に潜んでおり、免疫力が低下したときを狙って症状を出すというものです。
胸の症状は、ぴりぴりした焼けるような痛みを感じます。このような痛みの他に赤い湿疹が線状に出るのが特徴(痛みの方が先の場合もあります)で、胸だけではなく腰や背中に痛みが出る場合もあります。

12.肋骨骨折(その他4)

胸の痛みの中でも肋骨の辺りに強い痛みがある方は肋骨骨折(又はひび)の可能性があります。肋骨骨折は様々な理由で起こりますが転倒やどこかに肋骨を打ち付けて起こることが多いと言われています。高齢の方ではマッサージが強くてろっ骨にひびが入るという場合もあります。
肋骨骨折は骨折をした直後は痛みがなくてもしばらくしてから痛みが出てくるケースもあり、そういった場合は発見がどうしても遅れがちです。また、肋骨の痛みの程度も様々で深呼吸や咳・くしゃみで痛みが強まるという方も非常に多いです。
肋骨骨折が疑われる場合は基本的には整形外科を受診してください。整形外科のレントゲンではっきりしない場合には当院にて心エコーを撮ることではっきりしますので是非、お越しください(因みに当院にもレントゲンはあります)
肋骨骨折の所見がなく、肋骨の間の肋間に鋭い痛みが数週間続くことがあります。このような症状は肋間神経痛を疑います。

13.女性ホルモンの乱れ(その他5)

生理前に胸が痛む、妊娠中に胸が痛むという場合があります。
生理前は女性ホルモンのバランスが変わりやすく乳腺の血行などに変化が起こりやすい時期です。このため、胸全体の痛みや張りを招くことがあると言われています。また妊娠中も女性ホルモンのバランスが変化する繊細な時期であるため、生理前と同じ理由で胸が痛くなることがあるようです。
今までは胸が痛くなることが無かった、整理が終わっても胸が痛いというような場合には是非、受診をしてください。

胸が痛い時に合併して起こる他の症状

1.左腕の痺れ(しびれ)

左腕のしびれが胸の痛みに合わせて起こる場合には、狭心症や心筋梗塞を疑わなければなりません。このような場合には迷わず当院を受診してください。
狭心症や心筋梗塞は心臓に栄養を送る冠動脈の血流が悪くなり心臓の筋肉が酸素不足になり上手く働けなくなる疾患です。前述の通り胸の痛み以外にも様々な症状が出現しますが、左腕の痺れ(しびれ)は特徴的な副症状です。

2.肩が痛い

肩の痛みが胸の痛みに合わせて起こる場合にも、狭心症や心筋梗塞を疑わなければなりません。痛みは胸や肩だけでなく首、背中、顎などにも及ぶことがあります。
このような場合にも迷わず当院を受診してください。
また、実際には心臓に問題がないのに心臓が病気だと思い込み様々な症状を呈する心臓神経症でも同様の症状が出るケースがあります
診察の結果、心臓神経症であることが判明した場合で、内科的治療に抵抗性の重症のものでは当院の精神科に紹介を行います。

3. 歯が痛い

狭心症では、胸痛とともに、その痛みが放散して歯まで痛くなることがあります。しかし狭心症では歯だけ痛くなることは極めて少ないため、その場合は歯そのものの症状である可能性が高いです。いずれにしろ狭心症のリスクをおもちの場合は当院循環器内科に一度ご相談ください。

4. 胃がむかむかする(消化器症状)

心筋梗塞の症状の中で、胃のあたり(心窩部)の不快感を訴える方がいらっしゃいます。また胃痛、悪心、下痢などの消化器症状が、食事と関係なく増悪する場合は、心筋梗塞による症状である場合があります。このような症状のときは胸痛がなくても現れるときがありますので、胃や腸の病気と鑑別することが必要です。

5.息苦しさ

胸の痛みに合わせて息苦しさがあり、段々増悪する場合は、心臓疾患(狭心症、心筋梗塞、心不全)、肺疾患(気胸、胸膜炎)、肺血栓塞栓症を第一選択として疑わなければなりません。直ぐに救急病院を受診することをお勧めします。
また、実際には心臓に問題がないのに心臓が病気だと思い込み様々な症状を呈する心臓神経症でも息苦しさが出るケースもあります
診察や画像診断検査の結果、心臓神経症であることが判明した場合には、内科治療で様子をみます。症状が治療抵抗性である場合当院の精神科に紹介を行います。

6.酷い咳

胸の痛みに併せて咳が止まらないという場合があります。
心臓疾患や胸膜炎、肺血栓塞栓症の場合には、レントゲン、CT、MRI等の検査で原因を特定することが出来ますが、これらの検査を行っても何も異常が見つからないというケースがあります。

この場合、咳をすることで決まった場所がうずく(ずきずきと痛む)場合には、骨や筋肉・神経などが痛みを出している可能性を検討します。
また、骨粗鬆症の方の場合は咳のし過ぎで肋骨骨折(又はひび)を招くこともあると言われています。

7.くしゃみが止まらない

胸の痛みがくしゃみの時に強まるという場合があります。
この場合には咳の時と同様、肋骨骨折(又はひび)を最初に疑わなければなりません。

肋間神経痛(不自然な体の動きが原因で肋骨の間にある肋間神経という神経が筋肉にはさまれて痛みを出している症状)という可能性もあります。
肋間神経痛の場合は薬を処方の上、様子を見ていただくと数週間で治ることが大半です。