高血圧外来

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    高血圧外来とは

  1. 高血圧外来とは、治療が対象となる高血圧を放置しないことを目的とした外来です。以下、患者さんから多く寄せられる質問への回答を通じて、当院の高血圧外来をご説明いたします。
    1. Q1. 症状がなくて今まで元気なのにどうして高血圧を治療しないといけないのでしょうか?
      Q2. 高血圧は薬を飲まないといけないのでしょうか、生活習慣では治らないのでしょうか
      Q3. 高血圧の薬は一生飲み続ける必要があるのでしょうか
    では高血圧を放置すると「こわいことになる」「リスクがある」とはわかっていても、「高血圧を放置すると具体的にどうなるのでしょうか?」という問い、この質問が聞かれることはほぼありません。
    こわいことはやっぱり聞きたくないのは誰にも共通した思いであるのでしょう。しかし、高血圧治療を始める、ないし勧められた場合には、高血圧を放置するとどうなるのか、ということの理解がスタートであるべきです。
    Q1-3の答えも含め、以下に説明していきます。
  2. 高血圧(降圧剤等)の予防薬については「高血圧(降圧剤等)の予防薬ページ」をご覧ください。

    高血圧外来 診療時間・担当医

  1. 診療時間・担当医はこちらをご覧ください

    高血圧を放置するとどうなりますか

  1. 日本における高血圧に起因する死亡者数は年間10万人にも及びます。
    さらに、日本人の死因の一位は悪性腫瘍、二位は心血管疾患、三位は脳血管疾患(脳卒中)ですが、このうち心血管死亡の約50%が高血圧に起因するものと考えられます。

    現在までの大規模臨床研究の統計解析により、「血圧が高くなればなるほど心血管病になりやすくなる」という相関関係があります。心血管病とは狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの疾患を指します。このような疾患を一旦発症すると、心臓や脳の障害により、今までのような仕事ができなくなったり、命を落とす場合もあったりします。

    従って、高血圧を放置すると死につながるような疾患になりやすくなる、とは決して誇張ではなく、統計的に示されている事実です。

    では、「血圧が高いのに俺はぴんぴんしているぞ」とおっしゃる方も時にいらっしゃいます。この現象は統計の意味を考えるとわかりやすくなります。

    血圧が高いと即全員がいきなり心血管疾患になるとは限らないのです。確率が上がるということであり、一部には血圧が上がってもぴんぴんしている人もいることでしょう。しかしこの先何十年その人が心血管病を発症しないで一生を無事に終えるかどうかは、残念ながら医学的な保証が全くありません。統計では確率が上がる、ということであっても、どっちに転ぶか、その人その人で病気のなりやすさも千差万別です。ただし、一旦病気を発症してしまえば、その人は高血圧治療をしておかなかったことを悔やむに違いありません。少なくとも高血圧治療をしておけば、心血管病になる確率はかなり減っていたはずです。

    過去の臨床試験のメタアナリシスの疫学データによると。収縮期血圧10mmHg、拡張期血圧5mmHgの低下により、心血管病リスクは、脳卒中で約40%(33%-48%)、冠動脈疾患で約20%(17%-27%)減少することが示されております(高血圧治療ガイドライン2014、日本高血圧学会編)

    つまり、血圧治療をする、という意味はこうした心血管病にかかりにくくする有効な方法であり、今までの統計データにより示されている事実なのです。
    高血圧はほとんどの方は症状がありません。しかし治療しなくてはいけないのは、こうした心血管病になる確率を減らすためです、これがQ1「症状がなくて今まで元気なのにどうして高血圧を治療しないといけないのでしょうか?」の答えです。
  2. 高血圧とはどのような状態を指しますか

  3. 140/90 mmHg以上を高血圧といい、全て治療の対象です。本邦における複数の臨床研究でも、140/90mmHg以上の母集団では、高血圧が心血管病死亡の危険因子となり、死亡率の上昇などが示されています。

    家庭での血圧値も治療の参考になるといわれています。なぜなら家庭血圧での予後予測能は診察室血圧よりも高いことが示されているからです。家庭血圧値での基準は下記のように、診察室の基準より収縮期、拡張期ともに5mmHg低いものとなっています。また患者さんによっては「白衣高血圧」といい、診察室でのみ血圧が異常に高くなる状態があります。血圧の管理においては家庭で血圧計をご用意いただいて、測定する習慣をつけることが重要です。
  収縮期血圧   拡張期血圧
診察室血圧 140以上 かつ / または 90以上
家庭血圧 135以上 かつ / または 85以上

    高血圧の治療をいつ開始しますか?

  1. リスクに応じて生活習慣の改善を図ります。低リスク群では3カ月、中等リスク群では1カ月の間生活習慣の修正を試みます。目標値に達しなかった場合には降圧薬の治療を開始します。

    生活習慣の修正は①減塩、②栄養素の摂取(野菜、食物繊維、DASH食)、③適正体重の維持、④運動、⑤節酒、⑥禁煙、などが挙げられます。

    ただし、実際には生活習慣の修正では血圧値が目標値に下がる方は少ないです。しかし生活習慣の是正により降圧薬の効果を高め、薬剤数と用量を減らすことができるとされます。降圧治療が開始されても生活習慣の修正は維持することが必要です。

    従って降圧治療における生活習慣の役割は重要ですが、最終的に目標値に達するかどうかは、患者さんの置かれた生活背景や生活習慣是正の施行状況によりまちまちです。ただ実際には生活習慣の修正のみで降圧目標に達する方は少数であることが判明しています。Q2「高血圧は薬を飲まないといけないのでしょうか、生活習慣では治らないのでしょうか」の答えとしては、経過観察の期間内に目標値に達しなかった場合には、投薬治療が推奨される、ということになります。目標値に達しない期間が長くなればなるほどリスクが放置されることに等しい訳ですので、早急に投薬治療が勧められるのです。
  2. 高血圧治療のゴール

  3. それは最初の「高血圧を放置するとどうなりますか」の答えと関係しています。高血圧治療のゴールは一生の間に心血管病にならないことです。しかし、高血圧の治療だけではなく、脂質異常や糖尿病、喫煙など他の危険因子も合併していると、心血管病になりやすくなってしまいます。高血圧の治療だけしていれば全て十分というわけではありません。
    それでは、高血圧治療はいつまで続けなくてはいけないのでしょうか?
    例えば40代の方と60代の方では置かれているリスクの状況が全く異なります。下の図をご覧ください。

  4. これは日本高血圧学会ガイドラインから転載したものです。 一番左が中壮年者(40-64歳)、中央が前期高齢者(65-74歳)、右が後期高齢者(75-89歳)のグラフで、グラフ内で血圧が高くなればなるほど心血管死亡のリスクが上がる、ということを示しています。
    これら3つの年代を比べてみると、中壮年者(一番左)などの若い年代ではリスクが階段上に上がっていくということがわかります。前期高齢者(中央)

    では上がりが緩いですが、やはり右肩上がりのグラフです。後期高齢者(右)では、リスクの上昇は緩いです。
    従って高齢になればなるほど、血圧が上がることのリスクは低減していく、ということがわかります。それは高齢者の方が、その年齢までなにごともなく生きた分と、その後の余命が短いことから、高血圧そのものによるリスクは小さく算定されるわけです。このデータによれば75歳以上になれば血圧治療が不要になるか、と思われるかもしれません。

    しかし一方で別のデータでは後期高齢者であっても血圧水準とともに心血管病死リスクが高くなる傾向があるとされています。
    従って、高血圧治療の目的は長期にわたって、血圧を適正レベルに維持し、かつ血圧以外の危険因子も管理して、心血管病を予防することにあります。

    よく、薬を一生飲まなければならない、とか言います。しかし、この言い方はおかしいと思います。薬を飲むか飲まないかは飽くまでも患者さんが決めることであり、またその時の状況で変わってくると思われます。今降圧治療を開始したからといって、一生続けなければならない、というのは言い過ぎです。人間、先のことなどわかりません。一切の治療を拒否して、自然のままに生きるという生き方もあると思います。それは人それぞれの人生観で決めるべきことです。降圧治療も同じです、治療にメリットがなければ、やめるという選択肢も出てくるのです。

    しかし、医療者の目的は病気を治療したり予防したりすることです。心血管病になりたくない、そのリスクを背負いたくない、という思いの方には、降圧治療をお勧めします。心血管病になるであろうとわかっていて、降圧治療を勧めないのは、医療者の立場上あり得ません。現時点でのエビデンスでは、降圧治療の方にメリットがあるので、それに準じた手助けをさせていただきたいと思っております。
    これが、Q3. 高血圧の薬は一生飲み続ける必要があるのでしょうか、の答えになります。
手塚 大介

手塚 大介

Daisuke Tezuka
AIC八重洲クリニック 循環器内科 科長
循環器内科専門医
担当医師紹介について 診療時間について お電話でのお問い合わせ:03-6202-3375
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