高血圧(降圧剤等)の予防薬
-
目次
高血圧の薬(降圧剤)の種類と使い方
※横スクロールで全ての情報が表示されます。
-
降圧剤を用いた治療の目的としては、血圧を下げることではありません。
血圧を下げることによって、高血圧による直接の死因となる、心筋梗塞や脳卒中などの病気を発症させず未然に防ぐこと、になりますが、降圧薬の選択は処方する医師によっても、症状によっても異なりますことをご了承ください。- 降圧剤治療薬の基本的な選択方法
-
- 症状によって使い分けます。
- 糖尿病の方
- 高血圧を合併している方にはACE阻害薬とアンジオテンシンii受容体拮抗薬(ARB)が用います。カルシウム拮抗薬、α遮断薬もよく用いられます。
- 高齢者の方
- 55歳以上の方はカルシウム拮抗薬が第一選択となります。140~159かつ/または90~99の血圧の方には利尿薬が用いられます。症例によりACE阻害薬とα遮断薬も使用します。
- 狭心症の方
- 降圧効果が最も強いカルシウム拮抗薬が第一選択となります。運動時の血圧上昇を抑制するときなどはβ遮断薬が用いられます。
- 脳血管障害の方
- 脳卒中の治療薬にはカルシウム拮抗薬が最も多く用いられます。症例によりACE阻害薬を併用する場合もあります。
- 心不全の方
- 症状を緩和させる場合には利尿薬が用いられます。長期にわたる治療にはACE阻害薬、β遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いて治療にあたります。
- 心筋梗塞の方
- 左室リモデリング、左室内腔拡大の予防ACE阻害薬、内服のβ遮断薬投与は発症24時間以内に服用させることが勧められています。
- 脂質代謝異常、前立腺肥大の方
- α遮断薬は糖・脂質代謝への悪影響が少ないため、脂質代謝異常に用いられます。が用いられます。前立腺肥大の方にも、現在最も多く使われる内服薬となっております。
- 糖尿病の方
- 症状によって使い分けます。
-
- 降圧剤治療薬の基本的な選択方法
降圧剤治療薬の使い分けについて
- 高血圧のお薬で起こりやすい副作用があります。
- めまいやふらつき
- 降圧効果が強すぎた場合、血圧が低下し血液を送りにくくなります。その結果、脳まで十分酸素が届かず、めまいなどを起こす場合があります。
- 対策
- 担当に相談し、急な運動(立ち上がりなど)を控えるようにします。
- 対策
- 高血圧の薬(Ca拮抗薬)を服用中、グレープフルーツジュースを飲んだらめまいをおぼえる事があります。
- 対策
- グレープフルーツには薬の分解を抑えてしまう成分が入っているため、血圧を下げる効果が強く出てしまいます。グレープフルーツの他、ダイダイなども避け、みかん、オレンジ、レモン、カボスなどにしましょう。
- 対策
- 降圧効果が強すぎた場合、血圧が低下し血液を送りにくくなります。その結果、脳まで十分酸素が届かず、めまいなどを起こす場合があります。
- めまいやふらつき
副作用に対して
- 少し長くなりますが、何故高血圧になった場合に血圧の薬を服用した方がよいか実際の事例を下に考えてみましょう。
- 外来で血圧が高い方に降圧薬のご相談をする際に、患者さんから「血圧の薬はのみだしたら死ぬまで一生の間、続けないといけないのですか?」とよく聞かれることがあります。これは医師の立場からすると誤った認識であると思います。
- まず、高血圧の人がどうして血圧の薬を服用しなければならないか、というと、高血圧により動脈硬化になって脳梗塞、心筋梗塞、腎不全などの病気になり、高血圧を放置することにより寿命が短くなります。現在日本人の寿命が年々伸びるようになっていますが、これは栄養摂取がよくなったり感染症が制御できたり、という側面もありますが、血圧の治療をするようになったお陰でもあります。
- 「死ぬまで一生のむ」というお話しの中に、実はその人が80歳以上の平均寿命まで生きられる事が前提として想定されている、ということがあります。さらにいうと、高血圧を放置していても脳梗塞、心筋梗塞、腎不全にもならないで健康のままで80歳以上、生きられる、とその人は思っている事を意味しており、高血圧によるリスクを一切無視した発言なのです。もしそのまま健康で生きられるのなら、薬なんて不要になるのは当たり前の話しです。
- しかしこれはおかしい話で、血圧の治療をしなければ、もっと早くに亡くなってしまうかもしれません。血圧が高い、ということは危険がくるよ、と教えてくれるのにそれを無視してしまう事になります。死因と直結する疾患、高血圧というのはそういう病気なのです。
- 私達の心の中には不安を抑える安全装置があり、漠然と今の生活・健康状態がおんなじ状態で続くだろう、と思ってしまう、あるいは思いたい、というバイアスがかかっています。その上、このバイアスが誤りだということに気づく機会はそう多くはありません。まず高血圧は放置してはいけない、ということを認識する必要があります。
- さて、血圧の薬は服用すると血圧を下げることができますが、服用をやめると血圧が元に戻るという性質があります。要するに薬の力を借りて、血圧を下げるという治療でもあります。新築の家でもだんだんに古くなります。体も血管が年々固くなり(≒動脈硬化)血圧が上がってきてしまうのです。薬を飲まないで血管を新しくするということは、古くなった家を壊して新築の家にする、という意味にもなり、それは無理な話です。血管が動脈硬化を起こしてくるから薬の力が必要になるのです。
- そこでこのようにおっしゃる方も多いです。「薬に頼らないで健康な状態でいたい」「薬ではない方法で血圧を下げたい」。
- 確かに薬以外の方法でそうなればそれに越したことはありません。しかし、現在までに薬以外の方法で血圧を下げる事が多くの方法が試されてきましたが、いずれも不十分なデータとなっています。現状の科学的エビデンスでは、方法はどのようであってもよいのですが、肝心なのは目標値以下へのコントロールがその人の予後がよくなることが判明しています。
- つまり、薬以外の方法があって目標値以下に下がればその方法でもよいし、その方法を試してみてダメなら薬で下げた方が健康で長生きできる訳です。
- 薬ってのむのが怖いという方もいらっしゃいます。確かに軽微な副作用が起こることはあります。しかし後遺症が後々でてくるような合併症などはありません。デメリットは多くはないのです。副作用がありながら服用を続けるということはありません。副作用がでたらすぐに中止するのが原則です。薬を中止すればそのような副作用もなくなります。むしろ、副作用よりも高血圧を放置して、脳梗塞、心筋梗塞などになる方が怖いという事になります。
- では血圧の治療はいつまで続けた方がよいのでしょうか?薬をやめることはできるのでしょうか?
- 働き盛りの間には薬をのんで、血圧の目標値に達することにより、動脈硬化に伴う心筋梗塞などの病気を予防しておく、というのはライフプラニング上重要です、保険みたいなものです。いったん高血圧が原因となる脳梗塞や心筋梗塞を起こすと今まで通りの仕事が難しくなるかもしれません。収入も減ってしまうかもしれません。一旦このような病気になるともう元の体には戻れません。脳梗塞になればマヒや認知症が進みます。心筋梗塞になれば運動や体に負荷がかかることもできなくなり、心不全になりやすくなります。健康寿命を達成することなどできなくなってしまいます。
- 人によっては、減量や加齢により血圧が下がってくることがあります。このような場合には降圧薬を減量したりやめたりすることもあります。ですので、絶対に死ぬまでのまなければいけない訳ではありません。状態によってはやめることもできるのです。ただしそのような例は比較的少数です。大抵の場合には降圧薬をやめると血圧が上がってしまい、やはり薬が必要なのだと認識され、そのまま続ける方が大半となっています。
- もちろん、薬の力を借りたくない、60歳まで服用したが、今のところ心筋梗塞などは起こしていない、薬をやめて少し血圧が上がっても自然体の生活がいい、という考え方、生き方もありです。リスクを伴うことですが、基本的には患者さんが決めることです。医者としてはお勧め致しませんが、このような場合に自己責任で薬を中止することは可能です。
- 反対に服用し続けた場合にはどうなるか。一生続けて結果として、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全になどならずに、80歳を迎えたとします。この場合、健康寿命を達成できた、ということになり、血圧の治療のゴールに達した、ということになります。これが血圧の治療の意味になります。
- 繰り返しになりますが、血圧の治療の目標は血圧の値をさげることではなく、患者さんの人生の中で動脈硬化によって起こる脳梗塞や心筋梗塞・腎不全などの病気を起きないように予防すること、になります。感冒になったときには薬を服用して、治った後は薬をやめる事ができますが、血圧の治療のゴールは遠い先になります。動脈硬化に伴う病気を予防ができた、という事が患者さんの人生を通して見えるようになれば成功です。高血圧の薬を安易にやめる事がお勧めされないのはこのような理由になります。
- 死ぬまで薬をのみなさい、というのとは発想が違うのはわかっていただけたと思います。あくまでも薬をのむかのまないかは患者さんに意思決定権があり、医師としては血圧を治療したときのメリット、放置したときのデメリットを医学的専門の見地から説明させていただきます。その上で患者さん自身が治そう、予防していこう、というご姿勢をもたれて治療を行っていくのが望ましいことなのではないかと考えております。
- AIC八重洲クリニック循環器内科 手塚大介
高血圧の薬は「治療薬」でもあり「予防薬」でもある。
担当医師紹介について
診療時間について
お電話でのお問い合わせ:03-6202-3375
処方箋について
処方箋の有効期限は発行日を含めて4日間です。
処方箋の期限延長はできませんので、必ず4日以内に薬局へお持ちください。
期限を過ぎてしまった場合は、再診察、新しい処方箋の交付が必要となります(全額自己負担)。