循環器内科は、心臓と血管(動脈と静脈)の疾患を専門に診療する内科です。

冬に起きる心臓の症状について

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 寒くなり、知らず知らずのうちに胸の症状が気になりだしてご来院される方が多くなっています。胸痛、息切れ、心臓がどきどきする動悸(どうき)症状、この三つは心臓病を疑う代表的な症状ですが、冬場にも多くみられることが知られています。

 寒いとそれだけで自律神経に影響を与えます。特に、朝の外出時には交感神経の活動が強まり、血管を収縮し体熱を外に放散しないようにします。冬に血圧が上がってくるのはこの交感神経の働きのためです。また寒冷状態が心臓の筋肉をうるおす冠動脈に刺激し、朝の外出時に狭心症を起こすことも比較的多くあります。このタイプの狭心症は医学用語で使うような難しい漢字・言葉が入りますが、冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症といわれます。攣縮(れんしゅく)とはけいれんして収縮することを意味します。患者さんをみていますと、胸痛とともに胸がどきどきするような動悸症状を伴うことも多いようです。比較的若い患者さんにも起こり夜の安静時などにも多くみられます。

 この冠攣縮性狭心症がいったん起こると10-15分と比較的長く症状が続きます。悪いことに、冠攣縮により冠動脈が収縮した状態が続くと、心臓の筋肉にいく血流が低下し、心室細動のような致死性の不整脈が起こり、突然死する方がいます。

 冠攣縮の刺激となるのは寒さだけではありません。12月は師走といいますが、本当に忙しくなります。あいさつまわりや年内に終わらずべき仕事のシメ、夜の残業、忘年会の酒席、それから年末年始の準備などやらなければならないことがたくさんあります。
こうした機会に経験することが多いストレス、睡眠不足、疲労、過度の飲酒、また喫煙者では喫煙、その全てが肝攣縮性狭心症の発作の誘因になるのです。

 冠攣縮性狭心症は薬が効くタイプの狭心症です。主に冠動脈を拡張し広げるような薬を使用しますが、適切な投薬により発作は抑制できます。極まれに難治性の方では複数の投薬が必要となることがありますが、たいていはぴたっと効くのが特徴で、嘘のように発作がなくなるのもその特徴の一つです。

 症状を自覚している人は体から出される警告サインを正常に認識していると思ってよいと思います。困る場合は、時に働く人にとっては、仕事の忙しさに夢中になっていると、症状がでても「気のせい」「仕事が一段落しないと病院に行けない」などと思ってしまい、受診が遅れることです。

 もちろん、胸の症状は狭心症からくるものだけではありません。心身のストレス、呼吸器疾患、睡眠不足だけでも、息切れ、動悸などの症状が強くなる場合があります。
 12月に入り、空気が乾燥し寒くなっており、徐々に風邪にかかる人も増えているようです。忙しいこの時期だからこそ、睡眠をしっかりとるなどして体調管理に留意して、よい年末・年始を迎えたいですね。

AIC八重洲クリニック 循環器内科 手塚

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医学博士、医療法人豊智会理事、循環器内科科長、 東京医科歯科大学非常勤講師

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