循環器内科は、心臓と血管(動脈と静脈)の疾患を専門に診療する内科です。

虚血性心不全とは何か(その2)

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虚血性心不全とは何か(その1)のつづきです。

 読者の皆さま、お正月はお休みになられましたでしょうか。
本年も宜しくお願い致します。

 前回、「虚血性心不全」のお話をしましたが、実はこの病名、我々の世界でもあまり使わない言葉なんです。通常「虚血性心疾患」という言い方をします。また虚血により心機能がおちた状態は「虚血性心筋症」という言い方をすることもあります。これらの言葉は元々英語から訳されたものが多く、虚血性心疾患であればIschemic heart disease、虚血性心筋症はIschemic cardiomyopathy、心不全はHeart failure、うっ血性心不全はCongestive heart failureという言い方がメジャーです。一方Ischemic heart failureという言葉は英語ではほとんど使うことがないと思います。

 では、どうして虚血性心不全という言葉を使うのでしょうか?ここからは私の類推です。
 厚労省からの指導になりますが、死亡診断書を記載する際には直接死因に、疾患の終末期の状態としての心不全は書かない、という注意書きがされています。つまり、癌であっても感染症であっても最後の死因は心臓が止まること、つまり心不全により規定されますので、全て死因は心不全になってしまいます。そうなると死因統計をとる都合上、死亡の真の原因がわからなくなるから、死亡診断書には心不全を死因としては書かないように、とされています。一方で今回の事例のように、本当に心臓が悪くて至った死亡もあります。これを区別するために原因としての「虚血性」を冠した造語が「虚血性心不全」であるのではないかと思います。実際に死因などで使用するケースが圧倒的に多いようです。

 虚血性心不全こわい、という言説が流布していますが、これは心筋梗塞にならないようにしましょう、という話しと同じです。つまり、心筋梗塞の病態はよくいわれる動脈硬化と同じ意味であり、高血圧、コレステロールの高くなる脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙、腎機能障害などがその主なリスクとして知られています。また最近では睡眠時無呼吸症候群もこのリスクになることが言われています。特に、高血圧、脂質異常症は大きなリスクになりますが、症状がないため健康診断で異常が出ても、なかなか億劫なので受診されない方も多いです。また喫煙をされる方も高リスク群に入ります。このような方は心筋梗塞、またそのなれの果てである虚血性心不全の発症には注意をされた方がよろしいです。

 一方で面倒だと思いつつも定期的な受診をして薬を服用し、コントロールされている方は少し安心です。心筋梗塞になるリスクが安全域まで下がっているはずといえます。
 
 では、心臓の冠動脈の動脈硬化の状態を知るにはどうしたらよいでしょうか?最も外来で行われる検査は、心電図や心エコー検査ですが、簡便な一方で間接的な評価になります。
 詳細に見るためには当院の得意とする冠動脈CTが一番です。当院の冠動脈CTは320列という高分解能のCTに加え、被曝も平均四分の一程に少ないことが特徴です。ただ少ないとはいっても被曝があり、造影剤という薬を使用するCTは何らかの症状などがある場合に施行されることが多いです。症状のない方は被曝がなく、造影剤を使用せずに撮影することができる心臓MRIを使ったドックが望ましく、心臓MRIでも冠動脈を十分見ることができます。
 症状のあるなしに関わらず、一度心臓の状態を知っておきたいという方は、当院循環器内科に是非ご相談ください。

循環器内科 手塚大介

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医学博士、医療法人豊智会理事、循環器内科科長、 東京医科歯科大学非常勤講師

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