心臓の画像検査(エコー、CT、MRI)のそれぞれの違いについて
投稿日: 心臓を見る検査にはエコー、CT検査、MRI検査がありますが、それぞれ長所、短所があり、病態ごとに得手・不得手があります。
例えば心臓の動きを見るのには、心エコーはとても簡便で、プローベという超音波を出す棒を胸に当てればすぐに心臓がどういう状態かはわかります。ところが、心臓の動きはわかりやすいエコーですが、心臓を栄養している冠動脈や心臓の筋肉の性質はわかりにくいです。心臓の筋肉の性質をみるには、MRI検査がむいています。造影剤を使えば、心筋がダメージを受けているのかが、見た目でわかります。MRIが優れているのは冠動脈の状態をわかることもできます。しかし、MRIでは画質がやや落ちたりすることがあり、また患者さんの状態によってはきれいな冠動脈が撮影できるとは限りません。
その点、冠動脈をみるのには何といってもCTが向いています。CTでは画質がよく、また最近の新型のCTではあまり条件に左右されずに、きれいに撮像できます。
しかしCTでは被曝量が増えたりするため、心臓の動きの評価は難しくなります。
このように3つの心臓検査はちょうどじゃんけんの「3すくみ」のような関係になっています。検査の性格が3すくみになっているとは面白いものだと思います。
今は、心臓を評価する項目に着目して比べてみましたが、検査の能力をざっくりと比較してみましょう。
最低必須の画像を取得する時間でいうと、冠動脈CT(1秒以内)<心エコー(数分)<心臓MRI(20分)の順番に長くなります。また薬剤や被曝など体の侵襲を考えると、一番負担が少ないのは心エコー<心臓MRI<冠動脈CTの関係になります。また一つの検査での評価可能な項目の多い順番では心臓MRI>心エコー>冠動脈CTとなります。また歴史の新しい順番でいうと心臓MRI>冠動脈CT>心エコーとなります。
実際の臨床現場ではこれらを組み合わせたり、順番を考えたりして選択し、使用します。
当院に来院する患者さんで、「最新の心臓MRIを撮るんだ」と意気込んでいらっしゃる方が多くおられます。ネットなどでサーチされたのかと思いますが、残念ながら、保険診療で検査を行う場合には、それなりの疾病の存在を疑う状態で、なおかつ至適な検査を医療者側がチョイスさせていただくので、ご希望に添えない場合もございます。医療費が高騰しておりますので、医療機関には適正な保険診療をすることが求められているからです。
当院では他院より比較的廉価で、しかも検査内容は同様の最新式の心臓MRIドックをご提供しております。ここから誠に手前味噌になりますが、少し当院の心臓ドックのご紹介のお話しになります。
心臓突然死を予防するにはまず心臓ドックの受診から始まります。当院の心臓ドックは特に画質と読影のqualityは高く、チームで二重、三重のチェック体制を敷いて、通常見逃すような所見でも拾っております。このため、二次検査の冠動脈CTで動脈硬化のプラーク病変の診断をされた方が少なからずおられます。このことが可能であるのは、我々の読影のチームが心臓MRIに関しては10年近くの経験があるからです。もちろん、撮像後、画像はすぐにチェックを行い、重篤な所見のある場合にはご本人様にお知らせし、当日緊急に大学病院にご紹介するなどの緊急時即応体制もとっております。
心臓ドックで金額が高いほど、高度なことをやっているかと思う方がいらっしゃるのですが、そんなことはございません。ドックで使用している機械はどの医療機関もほぼ同じ機能です。ドックで行うような心臓MRIは今や珍しい検査ではなく、どこでもできるので、心臓MRIだけのドックで10万円以上もする検査ではありません。我々は多くの経験があり、MRIは普段使いしているのでこれは特別な検査だとも思っていないのです。当院ではより多くの方に新しい検査機器である心臓MRIの恩恵を受けていただきたく、適正な価格でご案内しています。
医療の本質は患者さんの闘病生活・健康生活に貢献をすることです。我々の心臓画像診断チームはそれを見誤らないようにして、患者さんに還元するべく常に最新の撮像法にもトライしております。そのことについてはまた本ブログで取り上げたいと思います(循環器内科科長)。
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