わかっていてもできないダイエット ―ダイエットでお金がたまる?―連載第四回目
投稿日: 肥満が心臓や骨に負担をかけ、色々な不具合が出てくることを前回お示ししました。今回はダイエットでお金がたまることをお話したいと思います。
まず、ダイエットをする際にもつべきイメージとして、お腹についた脂肪を有効利用しよう、という気持ちを持つことが大事です。
このお腹の脂肪は何故ついたのか?それは言うまでもありませんが、私たちが食べ過ぎたときに余剰なエネルギー(カロリー)として蓄積されたものです。要する「お金で買い、お金の対価として得られた食料のエネルギーが体内で加工されて体脂肪になっている」、と考えるとわかりやすいです。つまり体脂肪は余剰資産、有効に活用されていない貯金、資産ともいえます。
この体脂肪を使用することで食料を買わないですむ、これが体脂肪の現金化になります。
体脂肪を現金化するとは、要するに空腹時に間食などを買わずに済ます、この行為が現金化になり、その分が財布にたまり、「小金(こがね)が貯まる」ことになります。
読者の中には「なんだ、ただ食べるのを我慢するだけじゃないか!」とがっかりされた方もいると思われますが、それは違います。
二万円もらえる仕事があるとします。一方で仕事をしなくても二万円をもらえる作業があるとします。その作業はただ空腹に耐えること、でその間の時間、好きなことをしていていい、と言われたら皆さんどちらを選びますか?
私なら仕事をしない方を選びます。仕事をせずに、他のことをやりながら、二万円をいただけるなんて、おいしい作業だと思います。
余剰の食料を買わない、つまり、例えば一日600~-700円の貯蓄をするだけで、月に二万円分の貯蓄は可能となります。しかも、やせることができて、心筋梗塞や脳梗塞を回避し、これに伴う余分な医療費がかからない、またこのような致命的な病気にならないことで労働可能な年齢が上に引き上げられる、としたらどうでしょうか。
生涯にわたっての利益分はトータルとしてかなり大きなものとなるはずです。
ダイエットというのはそれだけの経済効果が期待できるものなのです。
閑話休題。それでは体脂肪、人間に不要のように思えますが、そもそも何で体脂肪としてエネルギーを貯蓄するようになったのでしょうか。
食料は太古の時代、そう簡単には手に入りませんでした。冬には食べられる植物の実もなくなってしまいます。食べられるときにたくさん食べ、体にエネルギー、つまり貯金のように蓄えておいて、お腹が空いた時、「食べないですますためにそのエネルギーを使おう」、というように体の代謝システムも適応・進化し、実はそれが体脂肪ということになります。我々の体内の代謝システムや行動パターンは猿の時代からの記憶が体にしみついています。ですから、お腹が空いたときに、見渡して食べ物があれば、すぐに手にとって口に入れる、これは猿の時代からの現代の人間にまで続く、人間にとってむしろ自然な摂食パターンなのです。
太古の時代の食べ物のない時代から、つい最近、昭和の戦争のときまで、飢饉、恐慌など歴史上の色んな事象で日本人は多く「充分に食べられない時代」を経験してきました。反対に、昔はエビス様のようにお腹の大きい人は珍しく、富の象徴でもありました。しかし、今はそうではありません。廉価で高エネルギーのものが容易に手に入る時代になりました。現在では、多くの人が「エビス様」になっており、お腹の大きい人は昔のように珍しくはなく、医学的には動脈硬化・心臓病をもたらす「ハイリスク群」、または新型コロナ感染症の重症化リスク群として認定されてしまいます。
つまり体脂肪というのは非常事態が起きたときに使用できるような「食べないですむエネルギー」の貯金なので、現代ではここにストックしておく必要はありません。過去に余計に多く食料を脂肪に換金、いや「換脂肪」したために生じた肥満ですので、今度はこれを食べないですむという行為により換金しないといけません。
このように、実際、ダイエットを始めてみると、余分な食べ物は買わなくなるので、小金がお財布に貯まるようになります。皆さんもやってみてください。「食べないですますこと」これは今はやりのSDGsにも通ずる発想です。エネルギーを無駄にお腹にためないで有効活用すること、これが日本人の死因や高度機能障害につながる原因疾患である心筋梗塞、脳梗塞を回避する、ということで実際に富を生み出すのです。
さあ、ここまで来たら、ダイエット始めてみるしかない!しかしどうやってやればよいのでしょうか?食事、運動と言いますが、具体的にどうすればよいのか、次回からお話ししていきたいと思います。
循環器内科 手塚大介
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