循環器内科は、心臓と血管(動脈と静脈)の疾患を専門に診療する内科です。

鉄過剰症による心不全の画像診断 ―期待されるT2*(スター)の役割―

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 鉄過剰症という状態があるのをご存知でしょうか?
 
 例えば貧血になったりすると、肉をとりましょう、鉄分を含むサプリメントを補充しましょう、あるいは鉄剤を服用しましょう、などと医師から指示されることがあると思います。

 ただ、高度の貧血になると赤血球輸血といって赤い血の輸血をすることがあります。

 多くのケースでは手術中や消化管出血などの場合で行われます。しかし定期的に赤血球輸血をしなければならない状態があります。血液をつくる機能(=造血機能)は骨髄にありますが、造血機能にダメージを与える血液の悪性腫瘍の患者さんでは輸血が慢性的に必要になることがあります。このような状態では鉄過剰症という状態になりやすいとされています。

 そもそも血液が赤いのは赤血球、ヘモグロビンが鉄分を多く含むからです。この鉄は酸素とくっつくことにより全身に酸素を運搬する働きをもっているのですが、酸素と結合した酸化鉄を多く含むため哺乳類の血液は赤くなります。

 よく鉄がさびると赤くなりますが同じ原理です。鉄のさびたにおいも血液のにおいに似ています。小学校のとき、雨の日になると階段の鉄製の手すりが嫌なにおいを発していました。鉄棒をやったときに手につくにおいも同じです。これは鉄さびのにおいですが、血液のにおいも同じようなにおいがします。

 ちなみにけがをしたときに出る血液はもちろん赤いのですが、これは静脈血のため、容器にたくさんためた状態でみると黒っぽくみえます。採血しているときに採血管にたまっているのは少し黒っぽくみえますね。逆に動脈血は真紅のような色をしており、容器にためてみても赤くみえます。我々は針を穿刺する際に色をみて動脈血か静脈血か分別することができます。
 さて、それでは貧血の方に頻回に輸血を行うと何故鉄過剰症という状態になってしまうのでしょうか?赤血球の寿命は3ヶ月ぐらいのため、時間がたつと壊され、その分鉄が残ります。残った鉄は造血の際にまた再利用され、鉄が過剰になることなく循環することになります。しかし、造血機能の病気の方で輸血をたくさん行い慢性的に継続されるような場合では、輸血などで補われた赤血球が3ヶ月程で壊れる一方で、元々の病気のため造血ができない為、鉄は使用されずに残り、体内を循環し過剰分の鉄となります。この鉄は排出される量はわずかなので体内に次第にたまっていくことになります。ただし、肉を多く摂取したからといってそれぐらいでは鉄過剰の状態にはなりません。


 この鉄は最初のうちは解毒をつかさどる肝臓でカバーしてくれます。しかしそのうち全身に沈着をし、心臓にも沈着してダメージを与えます。採血をすれば鉄がどれだけ余分にあるかわかります。しかし心臓の筋肉、心筋にどれだけ余剰にたまってきているかはわかりません。たまってきてしまえば、徐々に心臓の動きが悪くなってしまいます。その進行の性質は「不可逆的」といいますが、要するに一旦悪くなったものはなかなか元には戻りません。沈着しているとわかれば、すぐさま鉄を除去するような治療、キレート治療といいますが、その治療介入が可能となります。
 
 鉄の心筋への沈着を判定することができる心臓MRIの撮影法をT2*(スター)といいます。このT2*による撮影はどこの医療機関でもできる撮影ではありません。今回当院の技師さんの尽力によりボランティアー撮影を行い、正常範囲の至適な値が算出されました。

 輸血を長期間頻回にしなければならないような患者さんでは、心臓の状態が問題になってくる場合が予想されます。当院にご相談いただければと存じます。(循環器内科科長)

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